1.従来の設計法
ストレス・カーブによる設計法
目 次
1. 概説
2. ストレスカーブについて
3. 基本的理論
4. 設計手法
5. 問題点
6. 解説1ーパラボリックとセミパラボリックについて
1.概説
今日においても、最も一般的なロッドの設計法である、ストレス・カーブによる手法は、かの有名なバンブー・ロッド・ビルダーであったEverett Garrisonが’Master's Guide To Building A Bamboo Fly Rod’(Hoagy B.Carmichael との共著)の中で体系的にまとめたことで知られています。
それまでのロッドテーパの設計は多分に経験的なものであったと思われますが、それに対して、ギャリソンはロッドの負荷としてフライライン、トップガイド、ロッド自重、フェルール(継ぎ手)、ガイド、ニスなどの重量を勘案し、それらが最大加速度4Gによる慣性負荷(通常の4倍の重量になる)により、ロッドの全長に渡り、各部分の最大ストレス(最大曲げ応力)の分布のかたちを指定し、その値からロッドテーパを計算することを提唱しました。
このようにして、ギャリソンはロッドの設計に工学的手法を導入した先駆者と言えます。
もちろん、彼自身この手法により数々の名竿を生み出していったのは言うまでもありません。
2.ストレス・カーブについて
図1 ストレス・カーブの一例
図1はギャリソンが著書の中で掲げている代表的なストレス・カーブ(セミ・パラボリックカーブ)の一例です。
このカーブがロッドの特性を決める決定的に重要な要素となります。
彼は、特にセミ・パラボリックと呼んでいる形のストレス・カーブを持つロッドを推奨しています。
又、パラボリックと称するストレス・カーブにより設計されたロッドについては、カタパルトのように、ロッドに蓄えられたパワーが一気に開放される為、WF(ウェイト・フォワード)ラインのキャスティングに適していると言っています。
余談になりますが、ロッド・アクションでよく、パラボリック・アクションなどの言葉を耳にしますが、正確には”パラボリックなストレス・カーブを持つロッドのアクション”と言うことになるわけです。
ちなみに、どのようなロッドでも曲がり具合はパラボリックな曲線を描きます。
セミ・パラボリックとパラボリックの意味についてより詳しく知りたい方は最後の”解説1”をご覧下さい。
3.基本的な理論
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少し難しいかも知れませんが、興味のある方はご覧ください。
この項では、ストレス・カーブ法についての基本的な理論を簡単に説明いたします。
基本的には、ロッドに加わる曲げモーメント(各種負荷の合計)による最大曲げ応力(最大曲げストレス)を求める問題になります。
設計的には、指定のロッド位置に加わる曲げモーメントによって、指定したストレスになるように、ロッド径を求める計算をします。
図2はロッド先端に加わる力Fと距離Lはなれた位置のモーメントMの関係を示しています。(M=F×L)
図4の三つの基本式中の(1)式は曲げモーメントM、その位置での断面係数Zによる最大曲げストレスσ(シグマ)との関係を表す式です。
断面係数とは棒状材料の断面の寸法や断面形状によって決まる係数です。
(2)式はロッド径Dの正六角断面のロッドの断面係数Zを表す式です。
(1)式と(2)式から導かれる(3)式がギャリソンの著書中のFormulaY に相当するものです。
(3)式がストレス・カーブ法による設計の最終的な基本式になります。
この(3)式からあるロッド位置における指定したストレスσとライン、ロッド自重などによる曲げモーメントMから、必要とするロッド径Dを計算します。
4.計算手順
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(3)式を使って、以下のような手順で必要なロッド径(テーパ)を計算します。
次に、先端から計算位置までの以下の項目による曲げモーメント(重量×距離)を計算します。
無論、あらかじめライン番手、フェルール種類(スタンダード、トランケット、ステップダウン等のタイプ)とサイズ、トップガイド・サイズなどを決めておかなければなりません。
ギャリソンの時代と違って、現在では、手軽にコンピュータが利用できる為、簡単に式(3)からロッド径Dを求めることが出来ます。
このように、比較的簡単でありながら、大変合理的な設計法といえます。
5.ストレス法による設計の問題点
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以上の様に、非常に簡単な式により、ロッドのテーパー設計ができますが、以下のような問題があると考えます
ロッド・アクションの基本特性から見ると、一つのストレス・カーブは同一ロッド長、同一ライン番手に対しのみ成り立つ。
同一のライン番手でロッド長を変えたり、同一ロッド長でライン番手を変える場合に、同じストレス・カーブを利用できません。
使用フライ・ライン番手と、ロッド長によって一つのストレス・カーブしか設定できません。
例えば、ロッド長8’、DT6番ラインで設定したセミ・パラボリックなストレス・カーブでDT3番ライン用の8’ロッドを計算しても、基本的なキャスティング特性が同じようにはなりません。
図4の三つの基本式中の(1)式は曲げモーメントM、その位置での断面係数Zによる最大曲げストレスσ(シグマ)との関係を表す式です。
断面係数とは棒状材料の断面の寸法や断面形状によって決まる係数です。
(2)式はロッド径Dの正六角断面のロッドの断面係数Zを表す式です。
(1)式と(2)式から導かれる(3)式がギャリソンの著書中のFormulaY に相当するものです。
(3)式がストレス・カーブ法による設計の最終的な基本式になります。
この(3)式からあるロッド位置における指定したストレスσとライン、ロッド自重などによる曲げモーメントMから、必要とするロッド径Dを計算します。
ロッド・アクションの基本特性から見ると、一つのストレス・カーブは同一ロッド長、同一ライン番手に対しのみ成り立つ。
同一のライン番手でロッド長を変えたり、同一ロッド長でライン番手を変える場合に、同じストレス・カーブを利用できません。
使用フライ・ライン番手と、ロッド長によって一つのストレス・カーブしか設定できません。
例えば、ロッド長8’、DT6番ラインで設定したセミ・パラボリックなストレス・カーブでDT3番ライン用の8’ロッドを計算しても、基本的なキャスティング特性が同じようにはなりません。
あるストレス・カーブはロッド断面の形状がそのロッドと同じ場合にしか成立しない。
断面形状が異なるロッド(四角形、五角形、八角形、中空ロッドなど)は、それに対応したストレス・カーブをそれぞれ設定しなくては、基本的なキャスティング特性が同じにはなりません。
つまり、ストレス・カーブ法では基本的に同じようなキャスティング特性を実現しようとしても、各条件(断面形状、ロッド長、使用ライン番手、ロッド構造(中空、中実など)毎に、別のストレス・カーブを設定しなくてはならないわけで、そのためには、かなりのテストと経験が必要となります。
又、ストレス・カーブとロッドの曲がり具合が直感的に結びつき難い言う点もあります。
ロッド設計の際、ロッドの曲がり具合をイメージすることは大切なことでもあります。
中空構造のデュアル・スレックス・ロッドのような複雑な構造のロッドに対しては、ストレス・カーブ法は大変設計し難く、DFFRの開発に際しては、新しい設計法(曲率カーブ法)を採用しました。
これらの新しい設計法について、いずれ順次発表して行く予定です。
解説1 セミ・パラボリックとパラボリックについて
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ギャリソンの言う所のセミ・パラボリックカーブ及びパラボリックカーブについてその意味を少し詳しく解説しておきます。
付図1はそれらのカーブの相違を示すグラフです。(’Master's Guide To Building A Bamboo Fly Rod’より)
これらの名称は放物線(パラボリック曲線)から由来しています。放物線についてはご存知の方も多いと思いますが、ボールを斜め上方に投げた時にボールが描く軌跡がいわゆる放物線と言われる曲線となります。
付図2はその放物線の一例です。